今日は、靴とインソールの話をしたいと思います。
足からの情報、地面からのどういう力を受けるかというのは、人間の健康にとって非常に重要です。
私の臨床でも、一回の捻挫から足首や足底アーチの状態を崩して、その後膝の痛みや腰痛につながっていったケースは多々あります。
それだけ足の状態というのは大切であるということですね。

そして今日は、その足の状態に深く関わる「靴やインソール」と「膝の病気(とくに変形性膝関節症)」の関係性について、 2009.7に発表されている研究を基に、靴やインソールについての知識を深めていきましょう!

一番最近の研究では、インソールと靴がどのように膝の負荷と変形性関節症の症状と病気の進行具合に関連しているのか調査しているものがありました。最近わかった興味深いことは、靴や足の状況によっては、膝にかかる負担が大きくなり、変形性膝関節症のリスクが高くなるということ。しかしもし、靴やインソールを最適なものにすれば、膝を良い方向に持っていくことも可能であるということがわかったのです。

 

 

インソールと靴のポテンシャル

変形性膝関節症で起こりやすい膝の内側の問題は、インソールや正しい靴を使うことによって大きく変わってきます。正しい靴やインソールを使うことで、膝の内転防ぐことができ、内側の変形性膝関節症の発生を減らすことができるのです。
これらの研究では、外側のウェッジ(インソールの外側を上げる)が有効で、内側にかかる負担減らしてくれると述べています(病気の進行を減らすことはできない)。
また逆に内側のウェッジは、外側の膝関節症の症状を緩和する傾向があるそう。

 

インソールと靴は高いポテンシャルを持っているのですね^^。
この論文では、良い靴と良いインソールを持つことは、コストのかからない変形性膝関節症へのアプローチになると提言しています。
これからさらにこのことをリサーチしていくには、患者さんに様々な種類のインソールを使ってグループわけしていく必要があるということですが、これはおもしろい発見です。

膝関節症は中年以降の人によくみられるものです。
今までの考えでは、完全に治すことは無理で、メインの治療はその人のQOLを上げたり、痛みを取り除くもしくは負担を減らすことに重点が置かれました。

しかし、これからは、反薬物学的なアプローチとして、靴やインソールをみていくことが役に立つというのだから、おもしろいかも!

 

 

 

内側の膝関節症には外側のウェッジが有効

さて、これから内側の膝関節症について詳しくみていきましょう。

膝の内転動作が膝の内側に負担をかけるのは、いままでもわかっていたことでした。そして外側のウェッジがあるインソールは内側の膝関節症に良いと言われていますが、膝関節症に対して、最初にインソールを使おうとしたのは、1980代。

変形性膝関節症の中では、とくに内側の膝関節症が多いと言われていますが、外側のウェッジは歩いているときに膝の内転を4〜12%減らしてくれるそう(靴や裸足と比べて)。
これによって内側にかかる摩耗と内側にかかる負担を減らしてくれる傾向があるというのですね。

最近の機械的モデリング(3Dシミュレーション)では、圧力のかかっている1mmでも外側ずらすと、膝の内転動作を2%減らす事ができ、内側にかかる圧が1%減ることがわかりました。
しかし、時にはウェッジがありすぎると、膝の内転を増やしてしまう可能性もあります。この場合は患者さん靴の構造に問題があることが多いのですが・・・。足の前側と後側のアライメント(冠状面での)も関わってきます。外側のウェッジが10度以上になってくるとさすがに履き心地も悪くなってくるので、あまりよくないのですね。

 

最近の研究では、足の外側の全体にウェッジをつけてあげると、膝の内転を減らしてくれ、踵のみのウェッジだけだと内転を減らしてはくれないということがわかったそうです。ただ、女性の内側の膝の痛みを持つ人に、フルレングスの外側ウェッジとストラップをしてみてもらったところ、従来のウェッジよりかなりの効果を発揮したそうですが、ウェッジが多い分分靴を大きくしなければならなかったそうです。なかなかうまくいきません。

しかし、踵から小指の方までフルレングスでウェッジを作った方が良いと言う結論。
これはまた新しい話です。

そしてこの論文では、これにプラスして距腿関節(足首の関節)にストラップを巻くとさらに内転動作を防いでくれるようで、特に内側の変形性膝関節症のそこまでひどくない症状の方には効果が高いとのことでした。
ストラップをすると距骨の外反(外側に向く)が起こり、これにより膝の角度を減らしてくれて、膝の内側への負担を減らしてくれるのでしょう。

 

これらの外側のウェッジが膝の変形性膝関節症にとって良いとしているのは15のガイドライン中13個もあります。
しかし、研究の中では、効果のなかったという例もあります。カスタムメイドのラテラルウェッジを2年間使った人は、痛み、症状は減らなかったそう(抗炎症剤を使う頻度は減った)。またある研究では、2重盲検査で、5度のラテラルウェッジを6週間使ったケースではなんの効果も示さなかったようなんです。研究で良い結果というのは、あまり病気が進行してない人、腰椎が伸展してない(反っていない)人、若い人、肥満ではない人、で一番見られたということなので、まだまだこれからのさらなる研究が望まれますね。

効果を出している研究では、3ヶ月間以上インソールを使っていると、もう少し効果がでやすいと言っています。
またどういったタイプの靴にインソールをいれているかで、効果も違うということで、1日に5〜10時間使っている場合(3ヶ月継続)に一番効果が得られたました(5時間以下と10時間以上使った人と比べて)。
ちなみにこの研究でも、踵のみのラテラルウェッジ2年間では、あまり効果がなかったということでした。

今現在は、MRIでフルレングスのウェッジの効果をチェックしている段階だそうです。

 

 

さて、次に逆の内側ウェッジの話を少しだけ。

内側のウェッジ。このウェッジは外側の変形性膝関節症に使われます。

10人の患者さんに内側ウェッジを処方したところ、外側にぐっと押す力と、歩いているときの痛みが減ったそうです。そしてさらに、10人の健康的な人に内側ウェッジを処方し、さらに足首のサポーターを付けた場合、足の前方にかかる負担減ったそう。
外側の変形性膝関節症には効果ありそうですね!

ちなみに内側アーチをサポートするようなインソールは一般的に一番売られているものですが、前に述べていた内側のOA(変形性関節症)には良くないことが分かっています。
最近の研究では、健康的で若い人に、柔軟性のあるアーチサポートを使った場合、膝の内転の率(2番目のピークが6%増えた)が増えたよう。

このように考えると内側の変形性膝関節症の場合、内側アーチサポートは気をつけて行わなければならないでしょう。

 

 

 

靴と膝の関係性、裸足の方が良い!?

次に靴と膝の関係性についてのお話をしていきましょう。
ちょっとびっくりするような話がありますよ^^。

この研究では、靴を履きながら歩くということは、裸足で歩くよりも関節にかかる負担を増やす傾向にあるというのです。これは意外!?

またさらにフラットな靴、またはヒールが低いもの、柔軟な靴の方が関節には最適な環境を作るということでした(ただ、単に靴屋に行って素人が選んだ場合の効果は定かではありません)。

ある2つの研究レポートによると、裸足で歩くよりも、靴を使って歩いていた方が、膝の内側にかかる負担増えるという結果が出ています。
これらの研究では、40人の膝の内側のOA患者に、裸足と靴を比べたところ、靴の方が膝の内転度合いが7.4%多かったのです(15%の人は膝の負担が減り、20〜30%の人は膝の負担が増えたそう)。

こうなっていくと、靴を履いている事自体が、関節症のリスクを高める可能性があるということかもしれません。
ただし、裸足で歩く事はあまり実用性がなく、危険が伴うのは確かで、個人個人にあった靴をしっかり選ぶことが重要になってくるそうな・・・。そりゃあたしかに・・・。

最近では、ランナーの中で「ビブラムファイブフィンガーズ」などの足の指の形をした靴がはやっていますが、これも裸足で地面を踏む効果を考えているのでしょう。裸足走なんて言葉も聞きますよね。

 

ちなみに、みなさんが何気なくお店で買うときの靴は注意しなければならないこともあります。それは、そういう一般的な靴の中には、膝の病気を増やしてしまう可能性があるものがあるからです。若い膝の問題のない女性で、高いヒールを履いている人たちは、膝の内側にかかる負担が強くなり、膝大腿関節にかかる負担が増えていったといいます。

若い女性が履いているヒールでは、膝の内反(内側に向く)9〜14%増え、逆に男性の革靴(0.5インチのヒール)ドレスシューズでの、膝への負担には問題なかったそうなんです。ヒールが足にあまりよくないというのは、みなさんもわかると思いますが、膝の関節症にもなりやすいとなったら、避けた方が賢明かもしれません。この研究では、1.5インチ(3.81cm)以上のヒールは内側の負荷が増えるので、内側のOAの人は避けた方が良いだろうと述べています。

 

 

 

不安定な靴と安定性のある靴どちらが良い?

研究では、4種類の比較的使われている靴と裸足とを比べています。

「4種類の靴」
木で作られた靴
安定性のあるアスレチックシューズ
柔軟性のあるウォーキングシューズ
サンダル

木の靴とアスレチックシューズは、膝の内転を増やす事になり、柔軟性のある靴の方が裸足で歩く感覚と似ているということ。
結果としては、柔軟性のある靴や裸足と比べて安定性のある靴の方が、膝の負担がかかるようなんですね。

いままでも述べてきたように、今では、膝の症状の改善に対して、膝の内転を減らすことが非常にフォーカスされてきています。これにもどちらかというと柔軟性のある靴に軍配が上がります。
最近言われているのは、最近のモビリティーシューズ(回転性の高い靴)は、足の自然な動きを考えて作られているということで、こういったモビリティーシューズを使った方が、コントロールシューズ(安定性のある靴)を使うより、12%膝の内転が少なく、従来のウォーキングシューズより8%少ないということなのです。

まだ長い期間それを使用したときの効果についてはまだまだ研究不足ですが、一見安定性のある靴の方が良さそうなイメージがある私達にとっては目からうろこの話かもしれません。

 

そもそもこういったモビリティーシューズは足の筋肉を鍛えるように作られているそうで、固くて安定性のある地面を、逆に不安定な状態にして、足の筋肉を使うようにしているということらしい・・・。

以前、マサイ族のシューズ(MBT)というのがはやった時がありました。これもかなり不安定な靴で足のアーチがなくなるような構造なのですが、この考えでいくと、こういった不安定なシューズは逆に足の筋肉が鍛えられて良いのかもしれません。
裸足で歩いたとき、靴よりも、地面を掴むようにして力を使いますもんね。

 

さて、不安定な靴を使った実験を一つ。
12週間、123人に不安定な靴と一般的にシェルフから買った靴を比べてみた。両グループとも膝の痛みは軽減した。

ただし、不安定な靴を履いていた人達の方がややバランスが良くなったそうです。
このような不安定なシューズの利益は今のところ、微細なものかもしれませんが、試してみる価値はありそうです。

ちなみに前述したラテラルウェッジは、外側のウェッジを固くて良い物にして、内側は軟らかくしたものが一番膝の内転を減らしたそうですが、こういったことも安定する靴より、少し不安定なものの方が、効果が出るということなのかもしれません。ある研究によると、年配の人達79人(内側のOAを持っている)に靴のいろんな部分の固さが違う靴を履いてもらったら、膝の内転度合いが2.4〜6.2%減ったそう(通常の硬い安定した靴と比べて)。
また別のレポートでは、12ヶ月間この靴のあちこちの硬さが違う靴を履いてもらったら、痛みが減って機能がアップしたようです。

膝の内側のOAの人にとって、このような靴は効果がある可能性がありますね^^。

 

 

 

結論

さて長くなりましたが、この研究の結論を最後に。

膝にかかる負荷が増えれば増えるほど、OAになる確率が高くなります。
しかし、これはインソールや靴を考えることによって低くなるでしょう。
そしてこのインソールや靴をうまく使うことは、膝のOAにとって非常にコストのかからない治療戦略になるということがわかりました。

結論では、現段階での研究によると外側ウェッジを使って膝の内側OAを改善するためにいくつかの推薦事項をあげています。

1. そのインソールが外側ウェッジが足全体をカバーすること
2. 5度〜10度のティルト(傾き)があるもの
3. 距腿関節のストラップまたはアンクルサポートは、さらにウェッジの効果をあげてくれる
4. 一日5〜10時間が最適な時間である
5. ウェッジはフラットなヒール、内側サポートアーチがない状態で使用されるべきである
6. もしもウェッジが効果的であれば、比較的早くに痛みの緩和があるだろう
7. 若くて、肥満ではなくて、進行していないOA、良い足の筋肉を持っている人の方が、一番効果が得られる。

普段、このように靴やインソールによって足にかかる負担が変わるなんてこと、あまり考えたりしたことはないのではないでしょうか?
今回の研究で、膝の膝関節症にこれらの靴やインソールを最適なものにすれば、かなり効果が出せることがわかりました。外側のウェッジは同じ原理でO脚にも効果があるかもしれませんよね。
また安定した靴より不安定な靴の方が、足の筋肉が鍛えられ、膝には良いという新事実。これは目からウロコ情報でしたね。

以前から、こういったインソールや靴の状態には興味がありましたが、もっと深く知りたくなりました^^。

 

 

K.K.

 

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カイロプラクティックは、薬は使わず手だけで身体の治療をするアメリカ生まれのヘル
スケアです。
みなさんに知られているような筋肉骨格系の治療はもちろん、カイロの中の一つの学問
アプライドキネシオロジーでは、自律神経や内臓、ホルモン、神経、栄養のアンバラン
スをチェックし、それに対する治療を行うことができます。
アメリカではまさしくプライマリーケアとして認められ、準医師として統合医療の一翼
を担っています。

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麻布十番のカイロプラクティック治療院 CHIROPRATICA

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参考文献:

Advances in Insoles and Shoes for Knee Osteoarthritis

Rana S Hinman; Kim L Bennell

Authors and Disclosures

Posted: 07/14/2009; Curr Opin Rheumatol. 2009;21(2):164-170. © 2009

Abstract and Introduction