Fiber 食物繊維

つい30年前までは、食物から栄養を吸収した残りカスと考えられてきた食物繊維。
いままで栄養的な価値のないもので、便として排泄されるだけのものと考えられてきたのが、食物繊維です。
「日本食品標準成分表」には、食物繊維とは「ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化成分の総体」とされています。つまり食物繊維とは人間の体に消化・吸収されない成分なのです。

 

近年、体にとって重要な役割を担っていることがわかってきました。
ここ何年かは重要栄養素として6大栄養素にもあげられることすらあるのです。

たとえば、食物繊維はさまざまな機能性を有しており、サプリメント成分にも利用されています。
食物繊維の摂取によって大腸がんのリスクが低下することはよく知られています。
また、食物繊維の摂取によって、食後血糖値の上昇が抑制されることから、2型糖尿病の予防や血糖コントロールにも有用であると考えられています。

 

さて、この食物繊維、実は不要な物質を体外に排泄促進してくれるだけでなく、腸を適度に刺激し蠕動運動を促してくれる栄養素とも言えます。
食物繊維には、腸をととのえ、便通をよくする働きがあり、排便をスムーズにするだけでなく、食物繊維や発酵食品などに含まれる乳酸菌は、腸内環境を改善してくれるのです。

食物繊維の主な仕事は、腸壁にある余分なカスを掃除しながら進むこと。お腹の中は37℃と、真夏のような温度ですから、もし肉や魚などの生ゴミを置いておけば、とても腐りやすい環境なのです。そんな場所からゴミを片付けるのが、食物繊維の仕事です。

そしてもうひとつ重要な役割があります。
人間の消化酵素では分解できない食物繊維も、腸内細菌によって発酵されると(その時に出るガスがおなら)、腸内環境を健康に保つ善玉菌のエサとなるわけです。

 

食物繊維には大きく分けて2つの種類があります。
それは、水に溶けない「不溶性食物繊維」と、水にとける「水溶性食物繊維」です。

不溶性食物繊維は、水分を吸収して便をやわらかくし、消化管を通過する時間を短くします。
水溶性食物繊維は、不溶性食物繊維よりも、さらに水分を吸収してふくらむ(保水性にすぐれている)ため、腸内の有害物質を体外に排出する働きがあり、便の容量を増しやわらかくして、便秘予防や痔になりにくくする働きがあります。

不溶性の代表はセルロース(天然高分子)、ヘミセルロース、不溶性ペクチンなどで、ごぼうなどの根菜類や、玄米などの穀類、じゃがいも、さつまいも、豆類に豊富で、キャベツやレタスにも含まれています。
そして、水溶性の代表は低分子アルギン酸ナトリウムやペクチン、ポリデキストロース、グルカンなど、わかめなどの海藻類、オクラ、納豆、里芋などのネバネバ食品、果物全般、ドライフルーツ、青菜類などに多く含まれているものです。
ちなみにキノコ類は両方の食物繊維を含む万能選手です。

 

食物繊維をバランスよく補うためには、穀物、いも、豆、果物、野菜や海草など、いろいろな線維性の食品を幅広く食べることです。