Hypoadrenia 副腎機能低下症
副腎機能低下症というものを知っていますか?
最近日本でも耳にすることが多くなった慢性疲労症候群(CFS)、突発性低血糖症、慢性不眠、心労性神経機能低下症なども副腎機能低下症に包括されるものとして考えられているくらい現代人に大きく関わる疾患です。
副腎はストレスや免疫機能と密接な関係があり、まさに現代人の置かれている環境に影響を受けやすい臓器です。
「眠らない社会」と評されるように、現代社会では24時間、体にかかるストレスが多く、体の恒常と恒常性を保つために副腎がリセットおよび休養することなく稼動していると言っても過言ではないでしょう。この果てに副腎自体が恒常性を保ち、体のバランスを維持できなくなることで副腎の疲労が訪れます。
副腎とは
副腎の大きさはクルミと同じくらいで、重さはブドウの巨峰1個よりも少し軽い程度。形は調度ピラミッドのような形で腎臓の上にある臓器です。形はちいさくてもその働きは人間にとっては重要なそしてパワフルな働きをもった臓器です。俗に「ストレス調整臓器」とも言われるようにストレスに対する機能を持ちますが、それだけではなくホルモンの生産分泌、免疫、炎症、糖のコントロールに関わる働きのほか、炭水化物と脂質の代謝、たんぱく質と脂質のエネルギーへの変換、脂質の蓄積(特にわき腹と顔の頬)、胃酸のコントロールなどなど、副腎には多くの働きがあり、どれ1つをとっても人間の営みには欠かすことのできない働きばかりです。
また、副腎は加齢とともにその働きに変化がでてきます。思春期から青年期にはおもに生殖器で作られて来た性ホルモンは、中高年期になるとその多くが副腎でつくられるようになります。
副腎に負担となる原因背景
副腎は非常に繊細な臓器とも言えます。過信や些細なことでも予想以上のストレス負担を受け、それが慢性的に継続したり、突発的に何かが起きることによっても想像以上に負担となり、徐々に症状が慢性的になります。副腎の負担からくる症状のやっかいなところの1つは、今まで全く普通に生活・仕事ができていたのに、ある日突然にドーンと症状が現れることです。副腎への負担からくる症状を予防するためには、日常生活のチェックとその改善が一番です。
副腎への影響となる主な要因を挙げると・・・・
・重金属
・化学物質
・アレルギーを起こす原因物質
・過労
・喫煙
・睡眠不足
・早食い
・精製糖、精製漂白小麦の頻繁な摂取
・運動不足
・薬の継続服用(特に抗生物質、ステロイド剤)
・腐敗した食材の摂取
・カフェインの頻繁な摂取
・恐怖心
・不安
・恒常的な緊張
・肉体的ストレス
・親族友知人の死
・ウィルスや細菌の感染
・多量、頻繁な飲酒
・ジャンクフード、ファーストフードの頻繁な飲食
これに加えて生活習慣病といわれているような糖尿病、高血圧、高脂血症、そして低血糖症、慢性疲労症候群、花粉症など、持病として抱えている症状のストレスも副腎には大きな負担となります。実際には、副腎にかかる負担が慢性化し継続することでこれらの病気が発生することが少なくありません。
ハンス・セリエの“The stress of Life”から副腎と健康の関係を知ることができます。ここでも副腎は最も機能障害がよく見られる器官の一つと言われ、前述したような身体的、科学的、感情的ストレスなどにより影響を受けます。これらのストレスは形式に関わらず、副腎に負担をかけるのです。
私たちは常にストレスにさらされています。それでも、すぐに悪影響が出ないのは、副腎がストレスをコントロールしているためです。副腎は、抗ストレスホルモンを分泌し、ストレスから心身を守る働きをしています。
たとえば、副腎から分泌されるホルモンの中でも特に糖質コルチコイドというホルモンは重要なもので、細胞のエネルギー源となるブドウ糖を作りだします。また強力な抗炎症作用も持っています。軽いトレーニングによる筋肉などの炎症は、この物質の働きによってすぐに回復できます。しかし、長期的なストレスによって副腎がダメージを受けると、糖質コルチコイドの分泌異常が起き、炎症が持続してしまいます。
またコルチゾールも副腎から分泌される大切なホルモン。脂肪をエネルギーとして使えるようにする結果、糖質が蓄えられ、カラダの修復や回復に必要なタンパク質を使えるようにするという役割を担っています。
その他、塩分とカリウムのコントロールをし、脱水症状が起きないようにしているアルドステロン(電解質コルチコイド)や心臓の拍数や強さを増すことで代謝を促進させ、血糖レベルを上げ、脂肪をエネルギーに転換するのを促す働きがあるエピネフィリンやノルエピネフィリンもあります。
このようにして、副腎はさまざまなホルモンを分泌して、ストレス状況に対処し、身体の中からエネルギーを作るように働いています。
しかし、過剰なストレスが長期間にわたると、副腎はダメージを受け、ストレスと戦えなくなってしまいます。またホルモンの過剰分泌によりカラダにさまざまな問題を作ってしまうのです。たとえば、コルチゾールの分泌が過剰になると、免疫機能が低下してしまうことが言われています。
副腎がここまでダメージを受けるには、段階があり、副腎はそれぞれの段階で、違った反応を示すことがわかっています。これを副腎適応症候群または副腎機能低下症といいます。
副腎のストレスに対する反応の第一段階は「警告反応期」。この段階では副腎からのホルモン分泌が増加します。これは過剰なストレスと闘うためで、この闘いがうまくいけば副腎は正常な状態に戻りますが、闘いが長引くと副腎に負担が掛かり、機能低下が進みます。
「抵抗期」と呼ばれるのが次の段階。この時期にはストレスに適応し始め、副腎は肥大。従来のままだとストレスに見合うだけのホルモンを産生できないため、臓器そのものを大きくして増産体制に入るのです。
しかし、それでもストレスをコントロールできないと、副腎は反応する機能を徐々に失い、ついには第3の段階「疲労困憊期」に突入します。ここまでくると副腎は文字どおり、疲労困憊。ストレスにまったく適応できなくなり、副腎の大きさは抵抗期に比べて肥大しますが、その機能は著しく制限されます。結果として心身にさまざまな症状が表れてきます。
こうした適応症候群が表われるまでには、数週間から数カ月、さらには数年かかる場合もあります。しかも「警告反応」では、多くの人はストレス過剰であることに気づいていません。しかし、本当はこの段階で、すでにストレスの許容範囲は超えているのです。もしこの段階でストレスをコントロールしておかないと、「抵抗期」に移行し、そうこうしているうちに「疲労困憊期」に入ってしまいます。
この段階までに至ると、極度の疲労感、膝、腰、足などに繰り返し起こる障害、免疫機能の低下など、自分でもはっきりわかる程度の問題が出てきてしまいます。また精神的にも非常に落ち込み、物事を否定的に考えるようにもなってきてしまいます。
もしこの段階まで来てしまうと、治療をするのは難しく回復するまで年単位でかかってしまうこともあるので、どのくらいストレスをコントロールすることが重要かわかるのではないでしょうか。
副腎機能低下症の症状・・・
・朝寝床から起き出す気力がない(起きるのが辛い)
・6時間以上の睡眠をとっているのに疲れを感じる(起床後に頭がボーっとしている)
・塩分を欲することが多くなった(人から塩分摂りすぎと言われたことがある)
・いつでもどこでも知らないうちに眠っていることがある(移動中の交通機関内で寝ることが多い)
・眠りが浅いと感じる
・夢を見るほど熟睡できない
・睡眠薬や睡眠導入剤を飲まないと寝れない
・寝てから朝までに何度も目覚めてしまう(尿意を催してではなく)
・何か行動をするのに時間がかかるようになった
・日中でも頭の中に霞がかかったような状態であることが多くなった
・性的欲求がなくなった
・ちょっとしたことでパニックになる
・突然呼吸が苦しくなることがある
・ストレスで胃が痛くなることが多くなった
・風邪などの感染症にかかりやすくなった
・風邪をひても治りが遅くなった
・原因不明の微熱が続く
・傷がいつまでも治らないことが多くなった
・立ちくらみが頻繁にでる
・椅子から立ち上がったときなどに目の中に光がまばたくようなことがある
・小さなことで悩むようになった
・喜怒哀楽が激しくなった
・何をしても楽しくなくなった
・友人知人を含め人を会うのが面倒に感じるようになった
・食事をすることが疲れる
・生理前のイライラが増えたりチョコレートを食べたくなるようになった
・食事を1食抜くと疲れたり、イライラすることがある
・人の名前が突然思い出せなくなった
・朝食べたものが夜には思い出せない
・目覚まし時計が鳴っても起きられない
・午前中は仕事に集中する気力がない
・午後3時から午後6時ころに猛烈な睡魔に襲われる
・夕食を食べた後に気分がハイになる
・何かを考えること自体が面倒になった
また病状としては、喘息、慢性的な感染症、湿疹、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、リウマチ性関節炎、免疫障害、不眠症、頭痛、疲労、失神、女性生殖器障害、肥満、動悸、浮腫、学習障害、うつ症状、多くの婦人科障害(無月経、分泌後うつ病、月経前症候群、無排卵、更年期うつ病)、などと多岐にわたります。
カイロプラクティックでは・・・
全ての内分泌系障害に通じて言えることですが、副腎機能低下の治療も根本的な原因を評価・決定することが先決になります。精神的なストレスがあるのであれば、それに対するストレスコントロールが重要になり、もし構造的な(筋肉骨格系)の問題があればしっかり取り除く必要があります。また化学的な問題なら、砂糖に特に重点をおいて、アレルギーと食事の指導を行います。必要なら栄養素も一時的にとってもらうようにします。アプライド・キネシオロジーにおいては、副腎にかかわるリンパや血流ポイントの治療や、背骨の関節、内臓に対してマニュピレーション(機能障害を取り除くテクニック)を行い、機能を回復させていきます。
副腎機能低下症と低血糖症
副腎ストレス障害と低血糖症は併発するケースが多くみられます。もしも副腎機能低下が一番の原因である場合は、度々、アレルギー、感染症にかかりやすい、疲労、ときには精神的なうつ状態などの既往歴が見られます。
また副腎ストレス障害は、大量の精製された炭水化物の摂取による血糖値調節ストレスの二次的な問題として発生する可能性もあります。
低血糖のところでも述べましたが、血糖値が急激に上昇する場合、通常インスリンの過剰反応が起こり、血糖値が低下し、更に血糖値を上昇させるために、副腎からの糖質コルチコイドというホルモンが必要になります。
過剰に機能している副腎にこのようなストレスを更に加えることは、最終的に副腎の枯渇を招くことにもなります。
こういう人は、大抵さらに多くの糖質の高い食べ物を欲するようになります。
神経システムはこのような反応性低血糖症による影響を受け、特に糖分をエネルギーとしている脳は適切に機能することが不可能になります。注意散漫になり、記憶能力が落ち、仕事のやる気も落ちてきます。これによる感情的なストレスは副腎ストレス障害の悪化とともに持続的になり、更に適切な血糖値の調節能力を低下させます。このように栄養の問題とストレスの問題は密接に関係しており、「化学(栄養など)」と「精神(ストレスによる)」のバランスの崩れは「構造(筋肉骨格系)」にも影響を及ぼしていくようになるのです。
Finaly 最後に
ここまで読んで頂いたみなさんには、日常生活の習慣(姿勢、運動不足、食生活、ストレス)が原因になっているものがいかに多いかということがおわかり頂けたのではないでしょうか。またこれらの症状が全てにおいてつながりがあるというのもなんとなく理解できたのではないでしょうか。
ストレスは胃酸分泌を低下させ、腸の状態も悪くするので、栄養素吸収の低下を招きます。また甘いものや炭水化物に偏った生活は、副腎に負担をかけ慢性疲労を引き起こします。そしてそれらの内臓の不調は筋肉骨格系に反映され、姿勢を崩し、身体の痛みも作っていきます。
カイロプラクティックのすごいところは、ヒトのカラダを部分ではなく全体から見ることができ、これらの症状の原因を探し当てることができることです。ここに述べてきた現代に多い疾患の全てが、日常生活に基づいていると言っても過言ではありません。それらは悪姿勢、運動不足による筋肉骨格系の乱れ、食生活による栄養素不足、ストレスによる内臓機能の低下などによって起こることがわかっており、アプライドキネシオロジーの検査においては筋肉骨格の検査や内臓機能の検査によりチェックすることが可能です。もちろん正確には生化学検査や血液検査を必要とすることもあるかもしれません。
しかし、こういった体全体をみていくことができるのは、「構造」「化学」「精神」という健康の三角形からカラダを考えるカイロプラクターだからこそとも言えるのです。